【コミュニケーション】相手の本音を引き出すことで感謝され、得する「返報性の法則」
■相手の本音を引き出すと、感謝される。
相手があなたに対して、
「本音を引き出してくれて、本当に自分のやりたいことがわかった!」とか、
「忘れていた想いを思い出せて、初心に戻ることができた!」とか
「他人には言えないことをしっかり聴いてくれて、共感してくれた!」と感じたら、
その人はあなたに対し好意と信頼を寄せます。
そして、あなたのことを良い上司、良い同僚、良い友人として認め、「あなたのために何か役に立ちたい」と考えます。
きっと、あなたがピンチの時には率先して助けてくれることでしょう。
これを心理学の世界では「返報性のルール」と呼んでいます。
■「返報性のルール」とは?
「返報性のルール」は、社会心理学のロバート・B・チャルディーニが発表した法則です。その内容について
「人は誰しも、他人がこちらに何らかの恩恵を施したら、自分も似たような形でお返しをしなければならない、と感じるものだ」
とチャルディーニは言っています。
私たち人間の心理にはそういったルールが内在されているため、私たちは、本音を引き出して自分のことを認めてくれた相手に対して、自分からも似たような形でお返しをしたくなります。つまり、相手もあなたのいうことを受け止め、認めてくれるようになります。こうやって、いい人間関係が出来ていくのです。
■営業マンと上司のケース
例えば、受注が思うようにできなくて、「自分は営業に向いていないかも。。。」と落ち込んでいるメンバーがいるとします。そのメンバーに対し、ダメな上司は、「そんなことじゃだめだ。営業は行動量だ。とにかく動いていればなんとかなる。早くお客さんのところに行ってこい!」とそのメンバーの話も聞かずに、根性論で一方的に叱咤激励をします。
しかし、このメンバーにしてみたら、「そんなことは上司に言われなくてもわかっている。わかっているんだけど、頑張っても仕事がなかなかいい方向に進まないんだよ。」と思っているかもしれません。また、気持ちが凹んでしまい、立ち上がる意欲がわかない。そんな状態に陥っているかもしれません。けれども「自分が営業に向いていないのかもしれない」と思い、悩んでいることは、プライドもあって他人には言えずにいる。
そんな状態のメンバーに対して、上司が一方的に叱咤激励をしても効果はありません。もしそんな状態だとするならば、そのメンバーに対しては、まずモチベーションを上げるための動機付けが必要です。
このダメ上司の発言は、思いっきり強い風をぶつけることでコートを脱がそうとする北風の話に似ています。これでは、このメンバーは自力で立ち上げることが出来ません。
じゃあどうするべきか?こういうケースの場合には、あの物語の太陽のように次第に温度を上げていって、旅人が自分からコートを脱いだように、メンバーに対して動機づけを図る必要があるのです。
この場合、デキる上司は落ち込んでいるメンバーに対して、こんな質問をします。
「そもそも、(君は)なんでこの仕事を選んだんだっけ?」
「そもそも、(君が)この仕事をはじめたのはどうなりたかったからだっけ?」
そして、あとは黙って、メンバーが質問に対して自分でじっくり考え、自分の思いを吐露するまで言葉を発しません。デキる上司はにっこり微笑みを浮かべてメンバーが話し出すのを待っています。
そして、沈んでいたメンバーはこの上司の質問により、自分が営業職を希望した新入社員の頃を振り返ります。そして、「苦労することが多いけれど、その分、人として成長できる機会が多い」ことに惹かれて、営業職を選んだときの想いを思い出すのです。
そして、「こんな些細な事で落ち込んでいたらダメだ。いかに障害を乗り越えるか考えることが先決だ」といって、仕事へのモチベーションを取り戻すのです。
そして、自分が迷っていることを察して、叱咤激励ではなく、問いかけによってモチベーションを上げてくれた上司の思いやりに対して感謝します。
それから、今まで以上に、その上司のことが好きになり、厚い信頼を寄せるようになります。そして、この上司にずっとついていこうと思います。また、上司のために頑張って高い業績をあげ、チームに貢献しようと決意するのです。
デキる上司は質問術を使って、部下が心の奥に秘めていた思いを引き出し、部下のやる気を奮い立たせます。そして、部下から感謝され、より一層の好意と信頼を獲得するのです。
ダメ上司のように、相手の心理を考えない一方的なマネジメントでは誰も幸せになれませんが、デキる上司のように、相手の心理を好転させるマネジメントが出来ると、部下はもちろん、上司も得をするのです。
これがいわゆる感情面の「返報性のルール」の事例です。
みなさんもこんなご経験ありませんか?